深夜のちょっと小話
1999/07/23 第4話「おにぎりちゃん、について」
今回は「おにぎりちゃん」についてである、と言っても誰もわからないであろう(笑)。
私が小さい頃、小学校4〜5年生位だったろうか。近所に「おにぎりちゃん」なるものが出現した。この「おにぎりちゃん」正体不明・年齢不詳で、実は私も見たことが無い
・・。今回はそんなちょっと不思議な話をお届けしよう。
ある日の夕方である。私が友達の家から帰ってくると近所の子供たちが騒いでいた。ちなみに私も子供である。
「おにぎりちゃんがでた!」
でっかい声で叫んでいるのは散髪屋「カン」の息子、正男である。
俺 「オウ、マチャオ!どないしてん!!」
まちゃお 「あ、しんやくん!おにぎりちゃんが出たねん!!」
俺 「なにぃ!どこ行きおったねん!!」
実はこの町内で「おにぎりちゃん」を見たことが無いのは、私を含む2.3人だったのである。これだけ話題になっているにも係らず、自分がその中心人物を知らないことにはお話にならない。私は、一刻も早く「見てないグル
ープ」から逃れるべく、おにぎりちゃんを探した。
俺 「どこや!」
トモ 「あっち、ちゃう?」
ガレージ屋の娘、トモが首をかしげる。すでに俺は猛ダッシュをかけている。学年で2番目に速い足である。そこいらの奴には負けない自信はあったが、一学年一クラスしかないのが少々不安のタネで
ある。
まちゃおの兄貴で一つ年上のゆうきちゃん、トモの兄貴でゆうきちゃんと同い年のまえちゃんを加えて近所中を探し回ったが、結局見つからずに日は暮れてしまった・・。
ここでおにぎりちゃんについて説明しよう。おにぎりちゃんは別に人に危害を加えたりしない。
ただ、「おにぎりちゃん・・・。」と、つぶやいて歩いていくだけである。左手にはやはり、おにぎりを持っている。おかか説が有力であったが、事
の真相は誰にもわからない・・。ただ、左利きであろうと言う事は推理できる。中年風で帽子をかぶっていて顔が良く見えないらしい・・。
また、きまって晩飯の時間帯に出るのである。だとすると、あれは晩飯なのか?アウトドア派なのか?
このままではどうしようもない。
どうしても会いたい!
そんな理由からでたのが「おにぎりちゃん誘導作戦」である。
京都は路地が多い。例に漏れずうちの町内も路地が何本かあった。
行き止まりである事、見とおしが良い事、等の理由から染色工場の横の路地が誘導場所に決定した。作戦は「見かけたら路地へ誘え!」である。神出鬼没な事から作戦は立てても
あまり意味が無いと判断し、出来るだけその時間帯は外に出るように心がけるように約束した。やはり人数が少なければ不利である。
と、まぁそんな取り決めも忘れかけていた、ある土曜日の夕方。ついに、おにぎりちゃんは現れたのである。野球の練習が終わって、疲れて寝てい
た矢先であった。
妹 「お兄ちゃん! おにぎりちゃんやで!!」
俺 「・・・・・・・・・・・・」
寝起きの悪さに定評のある私にはなんのことかさっぱり解らなかった。
俺 「・・・に・・ぎりちゃ・・・??」 うーん、なんか聞いた事あるような・・!?
「おにぎりちゃんかい!!」
飛び起きた!脳にびりびり電流が走った。体中の血液がうねりをたてて逆流していくように感じる。
「この機会逃したら、一生見れへん!!」 なぜかそう体で感じ、狭い平屋の玄関を裸足で駆け出した!
まちゃお 「ここの路地入って行きおった!!」
その路地とは「誘導作戦」に予定していた路地である。うまくいったものだ。
「知ってたんか?」
何故かそんな言葉が頭をかすめる。
ウマクイッタノデハナイノカ?
素直に喜べない自分に説明がつかない。
ミタカッタノニ?
見たかったのだろうか?
ここで、ある一つの事象に気がついた。
「誘導」 ここで誘導されているのはまさに自分たちであった・・。
吸いこまれるように路地に入っていく。
俺を先頭に、まちゃお、妹、トモ、ゆうきちゃん、まえちゃん、と続く・・。
ちょっと待て、年上が最後かい!
まぁ、いい・・。
この路地はL字型になっているので、角から息を殺してのぞいてみる。
「・・・いる!?」
しかしそこには、想像していた光景とは程遠く、洗濯物だけがゆらゆらと揺れているだけであった・・。
「ほんまに入っていったんか?」
何度聞き返しても、まちゃおはうなずく。
「どういうことやねん・・。」
説明がつかない。
この路地の住人ならみんな知っているはずである。
まさか、おにぎりだけに「開けてみないと何が出てくるかわからない・・?」
ちなみに、それ以来「おにぎりちゃん」を見た者はいない・・。
不思議やのぉ・・。
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それじゃあ、みんなおやすみ!!