近年半導体デバイスの高密度化の進展は著しく、現在では1nm以下の微細加工技術が要求されるようになっている。
このことはとりも直さず、1nm以下の分解能を持つ分析技術が要求されるようになりつつあることを意味している。
従来薄膜評価(膜厚、成分組織分布などの評価)には、イオンビームを用いたスパッタエッチングとオージェ電子分光法(AES)
やX線光電子分光法(XPS)などの表面解析技術を組み合わせて使用することが多かった。しかし、イオン照射時における試料
原子のミキシング効果(原子混合効果)により本来の情報がぼやけてしまうため、従来使用されてきた数keVのエネルギー領域
のイオンビームでは、深さ分解能は2~4nm程度であり、次世代半導体デバイスの評価にはかなり無理が生じる。そこでミキシング
効果を抑えるために、イオンビームのエネルギーを小さくする事になるのだが今度はイオン銃の原理上の問題が生じる。つまり
エネルギーが小さくなるほど、イオンビーム電流が取れなくなるのである。そこで本研究では数100eVという低エネルギーでありながら
分析に要求される数μAのイオンビーム電流を取り出す事のできるよう工夫された後段減速型低速イオン銃を開発し、これを
用いてオージェ電子分光法(AES)による高分解能深さ方向分析を目指す。
後段減速型低速イオン銃の実際の外観
まとめ
本研究では低速イオン銃電源回路2台、レンズレモートコントローラ、ディフレクター回路、nAオーダーを測定する亊が可能な電流計2台 の製作をおこなった。製作したそれぞれの回路にレタリングし見映えの良いものに仕上げた。
また、同軸試料台を改良しナイフエッジを取り付けた。(下図)
これらをもちいて、フローティング低エネルギーイオン銃の特性評価であるイオン電流強度の引出し電圧依存性、最適収束条件における イオンビームひろがりパラメーターとイオンビーム電流の加速電圧依存性について調べおわった。
半年間の研究をとおしてAES、イオンビームでのスパッタリングの原理について理解をふかめる亊ができた。 また、実際に回路を作製していくことで抵抗のカラーコード、トランジスタ、オペアンプ、ダイオードなどの各素子ついても理解でき回路全体 の流れをみる亊ができる力がみについた。
今後の目標
ディフレクター回路をもちいてイオンビームを偏向させて、また制御測定プログラムをもちいて様々な試料の深さ方向分析を行ないたいとおもって
いる。